暴行や脅迫による性行為を規制している「強制性交等罪」や「強制わいせつ罪」が、『不同意強制性交等罪』や『不同意わいせつ罪』に変更され、それにともなって処罰要件等が変更されることが決定しました。
本日のコラムでは、刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が、この刑法改正について解説します。
改正される刑法
今回改正が決定したのは、刑法の中でいわゆる性犯罪に関する犯罪行為規制した条文です。
刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。 13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
刑法第177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛(こう)門性交又は口腔(くう)性交(以下「性交等」という。) をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法第178条(準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、 姦淫した者は、前条(第177条)の例による。
強制わいせつ罪と、強制性交等罪については、その規制内容が改正され、準強制わいせつ罪や準強制性交等罪については、強制わいせつ罪や強制性交等罪に組み込まれます。
変更される主な内容
①性交同意年齢
現在の強制わいせつ罪や、強制性交等罪は、被害者が13歳未満の場合は、暴行や脅迫を用いていなかったり、例え相手の同意がある場合でも処罰対象となっていましたが、この年齢が16歳にまで引き上げられます。
ただし被害者が13歳~15歳(16歳未満)の場合は、加害者との年齢差が5歳以上離れていなければ処罰対象となりません。
つまり20歳の男性が、15歳の女性と性交渉した場合は同意があったとしても、強制性交等罪となり得るが、19歳の男性が15歳の女性と性交渉した場合は、二人の間で同意があれば罪に問われないということです。
②処罰要件の変更
現在、被害者が13歳以上の強制わいせつ罪や、強制性交等罪が成立するには、暴行や脅迫を用いて犯行におよんでいなければなりませんでした。
しかし、今回の改正でその要件が大きく変更されます。
その処罰要件とは
- 暴行や脅迫(現在の強制わいせつ罪・強制性交等罪)
- 心身の障害(現在の準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)
- アルコールや薬物の摂取(現在の準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)
- 意識が不明瞭(現在の準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)
- 拒絶するいとまがない(新設)意識が不明瞭(現在の準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)
- 恐怖や驚愕(新設)
- 虐待(新設)
- 経済的・社会的地位に基づく影響力(新設)
これら8種類の要件によって、わいせつ行為や性交等の行為に同意しない意思の表示が困難な被害者に対しての行為が処罰対象となります。
③公訴時効の変更
現在強制わいせつ罪については公訴時効が7年、そして強制性交等罪については公訴時効が10年ですが、こういった性犯罪は被害者が精神的ショックを受けるなどして被害を申告しにくいケースがよくあることなどが考慮されて、公訴時効はそれぞれ5年延長されます。
また被害者が18歳未満の場合は、被害者が18歳になるまでの期間が加算されるので実質、被害者が18歳未満の場合は、被害者が18歳になってから時効期間がスタートすることになります。
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