人身事故を起こした18歳の少年が検察官に逆送された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
~ケース~
大阪府池田市の交差点で、歩行中の高齢女性と接触する事故を起こし、その場から逃走したとして、大阪府池田警察署は、Aくん(17歳)を過失運転致傷および道路交通法違反の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、今後どのように対応すればよいか分からず、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
検察官送致とは
「検察官送致」は、家庭裁判所が下す終局決定のうちのひとつです。
家庭裁判所が、少年に保護処分ではなく刑事処分を科すことが相当であると判断した場合に、検察官に送致する旨の決定を行います。
この決定を「検察官送致」決定といい、通常、「逆送」と呼ばれています。
検察官送致には、2種類あります。
(1)刑事処分相当を理由とする検察官送致
家庭裁判所は、「死刑、懲役または禁錮に当たる罪」を犯した少年について、「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」は、検察官送致をすることができます。
これを「刑事処分相当逆送」と呼び、刑事処分相当での検察官送致の対象年齢は、14歳以上です。
刑事処分相当逆送の要件は、
①死刑、懲役又は禁錮に当たる罪であること。
②①の罪を犯した少年であること。
③その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときであること。
です。
③の刑事処分相当性については、保護処分によっては少年の矯正改善の見込みが場合の他に、事案の性質、社会感情、被害者感情などを考慮し、保護処分に付すことが社会的に許容されない場合も刑事処分相当であるとされます。
また、行為時に16歳以上の少年で、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に当たる事件の場合は、検察官送致の決定をしなければなりません。
これを「原則逆送」事件と呼びます。(特定少年の場合、原則逆送事件となる対象事件が異なります)
ただし、原則逆送事件であっても、「犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格・年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」は、検察官送致以外の処分をすることができます。
(2)年齢超過を理由とする検察官送致
審判時に少年が20歳以上に達している場合、少年法の適用対象ではなくなるため、家庭裁判所は審判を行うことができず、保護処分に付することもできません。
ですので、このような場合、家庭裁判所は検察官送致決定をしなければなりません。
これを「年齢超過逆送」といいます。
交通事件と検察官送致
検察官送致決定が付される保護事件には、交通関係事件が多くあります。
無免許運転や信号無視、速度超過なども検察官送致の対象となります。
特に、人身事故を起こした場合には、審判の結果、検察官送致に付されるケースが多くなっています。
検察官送致となった場合には、少年にとってメリット・デメリットがあります。
略式請求での罰金刑や公判請求されても執行猶予が見込まれる場合、裁判が終了すれば事件が終了し、保護観察処分などのように審判後も保護観察官や保護司に定期的に面談する等の必要がありません。
しかし、刑事処分になれば、有罪判決となり前科が付くことになりますので、再度事件を起こした場合には、初犯扱いされません。
一方、保護観察処分は前科扱いされません。
このように、検察官送致となる場合にはメリット・デメリットがありますので、検察官送致に付される可能性がある場合には、刑事事件・少年事件に詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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