ひき逃げ・当て逃げ

具体例

ケース

大阪市都島区在住のAさんは、バイクで仕事に向かう途中、京橋駅前の国道1号線で歩行者と衝突しました。
Aさんは、警察に通報しなければならないと思いつつも、事故が発覚することや仕事に遅刻することを恐れ、その場から逃走しました。
後日、Aさんは大阪府都島警察署で任意の取調べを受け、そのまま逮捕されました。
(フィクションです)

(問題となる条文)
【救護義務・危険防止措置義務・報告義務違反(道交法117条2項、119条1項10号)】
交通事故を起こしたとき、自動車等の運転者は、負傷者を救護し、道路における危険を防止する措置をとらなければなりません。
これに違反した場合、「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます(道交法117条2項)。
また、事故に関する報告を直ちに警察官に行わなければならず、これに違反した場合、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」が科されます(同法119条1項10号)。

(解説)
ひき逃げとは、自動車やバイクなどを運転中に、人身事故を起こしたにもかかわらず、負傷者の救護措置や危険防止措置などを怠って、現場から逃走することをいいます。

これに対して、当て逃げとは、物損事故を起こした場合に、自動車等の運転者が負っている事故報告義務を怠り、現場から逃走することをいいます。
当て逃げの場合は、危険防止措置違反として「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」(道交法117条の5第1号)、報告義務違反として「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」が科されます(同法119条1項10号)。

ひき逃げの場合、人身事故が前提になっていますから道交法違反の罪に問われるのみならず、自動車運転死傷行為処罰法で規定されている過失運転致死傷罪などでも罰せられることになります。
また、飲酒や薬物を使用した上で人身事故を起こした運転者が、飲酒の影響などの発覚を免脱する行為(その場から逃走行為や、更に飲酒する行為等)をした場合も、自動車運転死傷行為処罰法処罰対象になります。

ひき逃げをした場合、通常の交通事故に比べて、重い処罰になる可能性が高いです。
特に事故の被害の結果が重大である場合には執行猶予判決を獲得できる可能性も低くなると言えます。
ひき逃げの場合には、事故自体の危険性だけではなく、人の生命身体に対する危険性が高い行為をあえて行ったことが非難されるからです。

ちなみに、人身事故を起こし犯罪が成立するためには、少なくとも加害者の過失が必要になります。

しかし、逃げるという、ひき逃げの場合には異なります。
人身事故については過失がなく処罰対象にならない場合でも、負傷者を救護しなかったという義務違反によってひき逃げで逮捕、処罰されるといったことがありますので注意が必要です。

ひき逃げ・当て逃げ事件における弁護活動

1 無実の証明

全くの無実であるにもかかわらず、あらぬ疑いをかけられ有罪になってしまう、いわゆる冤罪は絶対に回避しなければなりません。
ひき逃げ・当て逃げの事実に全く覚えがない場合には、弁護士を通じて警察・検察・裁判所に対して事故当時のアリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出したり、ひき逃げ・当て逃げを立証する十分な証拠がないことを指摘したりします。

また、事故現場から離れた場合でも事故自体に気づいていないのであれば、ひき逃げ・当て逃げにはなりません。
そこで、現場の状況や事故の態様などを客観的証拠に基づいて正確に把握し、加害者が事故発生を認識することは困難であったことを主張・立証します。
こうした弁護活動は、不起訴処分や無罪判決の獲得に結び付きます。

2 被害弁償や示談交渉

ひき逃げ・当て逃げした事実について争いがない場合、犯罪の成立について争っても反省の態度がないと見られてしまい、かえって重い量刑を科されてしまう可能性があります。
そこで、このような場合は出来る限り速やかに警察署に出頭した上で、被害弁償や示談交渉を行っていくことが重要です。

警察への任意出頭や被害弁償・示談成立により、不起訴処分や略式罰金(正式な裁判によることなく、罰金を支払って事件が終了する)で済むこともあります。
不起訴処分により事件が終了した場合、前科はつきませんから事件以前と何ら変わりない日常生活を取り戻すことができます。

3 早期の身体解放

ひき逃げ・当て逃げで逮捕・勾留されてしまった場合でも、加害者の酌むべき事情を主張し早期の釈放・保釈を目指します。
養うべき家族がいることや被害者との間で示談が成立しているなどといった事情は、早期の身体解放に有利な事情と言えます。

4 情状弁護

ひき逃げ・当て逃げの事実について争わない場合でも、事故の状況などから加害者側に有利な事情を客観的な証拠に基づいて主張・立証することで減刑や執行猶予付き判決を目指します。
具体的には、被害弁償や示談成立の事実・加害者の不注意が軽微なものであったことなどを裁判の中で主張・立証していきます。

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