文書偽造罪・偽造文書行使罪

具体例

ケース

大阪市福島区在住のAさんは、身分証明書として使う目的で自動車の運転免許証を偽造しました。
後日、大阪府福島警察署の警察官が、野田駅近くのマンション下で不審な動きをしているAさんに職務質問した際、Aさんが偽造した運転免許証を提示したため、免許証の偽造の事実が発覚しました。
Aさんは、大阪地方裁判所に起訴される直前、弁護を頼むため弁護士事務所を訪れました。
(フィクションです)

(問題となる条文)
【公文書偽造罪(刑法155条1項)】
行使する目的で、公文書を偽造した場合、「1年以上10年以下の懲役」になります。

【偽造公文書行使罪(刑法158条1項)】
偽造した公文書を行使した場合、「1年以上10年以下の懲役」になります。

(解説)
文書偽造罪は、公文書偽造罪と私文書偽造罪に分けられます。
公文書とは、健康保険証・運転免許証・戸籍謄本など役所や公務員が作成する文書のことを言います。
一方、私文書とは、申込書・誓約書・契約書など公文書以外の文書で権利や義務若しくは事実関係を証明する文書のことを言います。

文書偽造罪は、有印文書偽造罪無印文書偽造罪にも分けられます。
印鑑が押してある・署名がされている文書を偽造した場合は、有印文書偽造罪に分類されます。
印鑑が押されていない・署名がされていない文書を偽造した場合は、無印文書偽造罪に分類されます。

したがって、刑法上文書偽造罪としては、以下の四つの類型が規定されています。
・無印公文書偽造罪
・有印公文書偽造罪
・無印私文書偽造罪
・有印私文書偽造罪

有印文書は、無印文書に比べ、文書に対する公共の信用が高いため、有印文書偽造罪の場合には、重い法定刑が規定されています。
また、有印文書偽造罪の場合、罰金刑が定められていません。
よって、起訴されれば常に正式裁判によって懲役刑に問われることになります。

私文書偽造罪よりも公文書偽造罪の方が重く処罰されます。

文書偽造罪において最も注意しなければならないのは、同罪が目的犯であるということです。
この点は、裁判でもよく争われます。
目的犯とは、一定の目的をもって犯罪行為をしなければ犯罪が成立しないというタイプの犯罪をいいます。
文書偽造罪は、「行使の目的(偽造文書を人に見せ、あたかも本物の文書であると誤信させる目的)」がなければ成立しません。

今回のケースでは、Aさんが自身の身分を証明するものとして、偽造運転免許証を製造し、身分証として提示したことが問題となります。

ちなみに、偽造した文書を行使した場合(実際に使ってしまった場合)、別途偽造文書行使罪も成立します。

文書偽造事件・偽造文書行使事件における弁護活動

1 無実の主張

身に覚えがないにもかかわらず、文書偽造・偽造文書行使の疑いをかけられてしまった場合、弁護士を通じて積極的に無実を主張していかなければ、冤罪になりかねません。

具体的には、真犯人を示す証拠を提示したり、記入ミスや記載漏れが原因で文書偽造の故意がないことなどを主張したりします。
また、捜査機関の見解が十分な証拠に基づくものではない事を主張する場合もあります。

また、文書を偽造してしまった・偽造文書を使ってしまった場合でも、犯罪の不成立を主張する余地はあります。
例えば、偽造文書を使う目的はなかった(「行使目的」の否定)・他人を誤信させるつもりはなかった(「行使」の否定)ことなどを客観的な証拠に基づき主張します。

こうした弁護活動によって、不起訴処分や無罪判決を勝ち取り、前科を回避します。

2 被害弁償や示談交渉

文書偽造罪・偽造文書行使罪の成立に争いがなく、これらの行為で被害が発生している場合、早急に被害弁償や示談交渉を進める必要があります。

文書偽造による被害が大きくない・組織的反復的な犯行でないなどの事情があれば、示談成立による釈放や起訴猶予による不起訴処分の可能性があります。
不起訴処分になれば、前科を回避でき日常生活に障害が発生することもありません。

3 情状弁護

文書偽造事件・偽造文書行使事件で有罪判決を免れないとしても、犯行態様や反省の態度など被告人に有利な事情を主張して、少しでも減刑されるように弁護します。

また、執行猶予付き判決の獲得も目指します。

4 早期釈放・保釈のための活動

文書偽造事件・偽造文書行使事件で逮捕・勾留されてしまっても、被疑者・被告人が早期に釈放・保釈されるように弁護活動を行います。

具体的には、客観的証拠に基づき証拠隠滅や逃亡を疑うに足りる相当な理由がないことを主張・立証していきます。

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