~刑法を解説~ 第40章 毀棄及び隠匿の罪 

刑法を解説~最終回の本日は、第40章毀棄及び隠匿の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

毀棄及び隠匿の罪

第40章毀棄及び隠匿の罪では

第258条 公用文書毀棄罪 公電磁的記録毀棄罪
第259条 私用文書毀棄罪 私電磁的記録毀棄罪
第260条 前段 建造物損壊罪 艦船損壊罪
      後段 建造物損壊致死傷罪 艦船損壊致死傷罪
第261条 器物損壊罪
第262条の2 境界毀損罪
第263条 信書隠匿罪 
 
が規定されています。

まず第258条の、公用文書毀棄罪や、公電磁的記録毀棄罪は、公務所の用に供する文書や、電磁的記録を毀棄することによって成立する犯罪です。
「毀棄」とは、文書や電磁的記録の効用を害することをだとされています。
つまり物理的に壊すというだけでなく、隠匿によって使用できなくするといった行為も、毀棄に該当する可能性があるのです。
そして、公用文書公電磁的記録ではなく、権利、若しくは義務に関する他人の文書や、電磁的記録を毀棄すれば、第259条の私用文書毀棄罪私電磁的記録毀棄罪が成立します。
このように文書(電磁的記録)毀棄罪は、毀棄した文書や、電磁的記録が、公的な物なのか、私的な物なのかで適用罪名が分類されます。

続いて第260条の前段には、建造物損壊罪と、艦船損壊罪が規定されています。
建造物損壊罪艦船損壊罪は、他人の建造物や艦船を損壊することによって成立する犯罪です。
彼女の家で、彼女と口論になって腹が立ったので壁を殴って壁に穴を開けてしまった…というのが建造物損壊罪の分かりやすい事例です。
ここで問題となるのが、壊した物が建造物に該当するかどうかです。
上記事例を参考にすると、例えば、殴って壊したのが、壁ではなく窓ガラスだった場合、その窓ガラスの形状や、設置状況によって、建造物損壊罪が成立するのか、この後解説する器物損壊罪が成立するにとどまるのかが決まります。
そして、建造物損壊艦船損壊によって、人を死傷した場合は、第261条後段に規定されている建造物損壊致死傷罪艦船損壊致死傷罪が成立します。

ここまで、皆さんにとってあまり馴染みのない犯罪を解説しましたが、次に解説する、第261条の器物損壊罪は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
他人の物を損害したり、傷害することによって成立するのが器物損壊罪です。
分かりやすく言うと、人の物を壊すことで成立する犯罪ですが、人の飼っているペットを死傷させた場合も、器物損壊罪となります。
また器物損壊罪でいうところの「損壊」とは、物理的に壊すだけでなく、その物の効用を害することも含まれるので、例えば、食器に小便をかけたことによって、食器を使用できなくすれば器物損壊罪が成立します。

第262条の2に規定されているのが、土地の境界標を損壊したり、移動したり、取り除く等の方法によって、境界を認識できなくすることによって成立するのが、境界損壊罪です。
そして第263条には信書隠匿罪が規定されています。
信書隠匿罪は、他人の信書を隠匿することによって成立す犯罪で、隠匿とは、物理的に隠すだけでなく、意思伝達の過程でこれを妨害するなどの効用を害する一切の行為が含まれます。

毀棄及び隠匿の罪の罰則

①公文書毀棄罪、公電磁的記録毀棄罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
②私用文書毀棄罪、私用電磁的記録毀棄罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
③建造物損壊罪 艦船損壊罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
④建造物損壊致死傷罪、艦船損壊致死傷罪の法定刑は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます。
⑤器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。
⑥境界毀損罪の法定刑は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑦信書隠匿罪の法定刑は「6月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金若しくは科料」です。

 

今日まで、刑法を解説してまいりました。
新聞や、テレビのニュース等で聞き覚えのある罪名もあれば、「こんな法律あるの!!」と初めて聞いた罪名もあったかと思います。
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