~刑法を解説~50回目の本日は、第38章横領の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
横領の罪
第38章横領の罪には
第252条 横領罪
第253条 業務上横領罪
第254条 遺失物横領罪・占有離脱物横領罪・漂流物横領罪
が規定されています。
まず第252条の横領罪について解説します。
横領罪とは、自己の占有する他人の物を横領することによって成立する犯罪です。
また自己の物であっても、公務所から保管を命じられている物を横領しても横領罪が成立します。(第2項)
横領罪でいうところの「横領」とは、不法に領得する、つまり「不法領得の意思を実現する」ことで、行為に制限はありません。
不法領得の意思とは、窃盗罪等の財産犯が成立するのに必要とされており、その内容は「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用処分する意思」を意味します。
横領罪の主体となるのは、委託に基づいて他人の物を占有する者や、公務所から保管を命じられて自己の物を占有する者と限られているので、横領罪は身分犯の一種だといえます。
また横領罪における「占有」の基礎には、所有者と行為者との間に委託信任関係がなければなりません。
人から預かったり、借りている物を勝手に転売したり、レンタカーを期限内に返却せず、そのまま乗り続けたりすれば横領罪となってしまいます。
そして業務上、自己の占有する他人の物を横領すれば、第253条の「業務上横領罪」が成立します。
業務関係に基づく占有物についての横領行為は、通常、犯人と多数人との間の信頼関係を破るものである点において、その法益侵害の範囲が広く、また頻発のおそれが多いことなどから、業務上横領罪は、横領罪に比べると厳しい罰則が設けられています。
横領罪の最後第254条には、遺失物や漂流物、占有を離れた他人の物を横領することによって成立する、遺失物横領罪、漂流物横領罪、占有離脱物横領罪が規定されています。
横領の罪の罰則
①横領罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
②業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
③遺失物横領罪・占有離脱物横領罪・漂流物横領罪の法定刑は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~ 第39章 盗品等に関する罪」に続く