~刑法を解説~16回目の本日は、第16章通貨偽造の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
通貨偽造の罪
第16章には通貨偽造の罪について規定されています。
規定されている内容は
第148条1項 通貨偽造罪
第148条2項 偽造通貨行使罪等
第149条1項 外国通貨偽造罪
第149条2項 偽造外国通貨行使罪等
第150条 偽造通貨等収得罪
第151条 第148条~第150条の未遂罪
第152条 収得後知情行使罪等
第153条 通貨偽造等準備罪
この章では、いわゆるお金に関する法律が規定されており、その内容は、通貨に関する公共の信用と取引の安全といった社会的法益を保護する内容となっています。
この章で対象とされている「通貨」とは、貨幣、紙幣、銀行券です。
ここでいう貨幣とはいわゆる「小銭」を意味し、銀行券とはいわゆる「お札」を意味しており、紙幣については現在の日本に存在しませんので、この章で対象とされているのはいわゆる「お金」です。
第148条では、使用する目的でお金を偽造、変造すること(第1項)と、偽造されたお金を使用(第2項)することを規制しています。
この使用とは、偽造したお金で支払いをしたり(行使)、行使目的にしている人に偽造したお金を渡す(交付)ことです。
第149条では、同様の内容を外国通貨についても規制しています。
そして第150条では、偽造、変造されたお金を行使目的で収得することを規制しています。
ここでいう「収得」とは、自己の所持に移す全ての行為を意味しますので、第三者からもらうのは当然ですが、落ちているのを拾ったり、犯罪行為によって得ることも該当します。
また収得した偽造通貨を、行使したり、人に交付すれば、第152条に規定されている収得後知情行使罪となります。
これまで解説した第148条から第150条までの行為は、未遂であっても処罰の対象となります。(第151条)
最後に解説するのが、第153条に規定されている通貨偽造の準備罪です。
簡単にいうと、ここでは、お金を偽造するための道具を準備する行為を規制しているます。
通貨偽造の罪の罰則
①通貨偽造罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。
②偽造通貨行使罪等の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。
③外国通貨偽造罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。
④偽造外国通貨行使罪等の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。
⑤偽造通貨等収得罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
⑥収得後知情行使罪等の法定刑は、行使した「額面の3倍以下の罰金又は科料」ですが、2000円以下の過料を科すことはできません。
⑦通貨偽造等準備罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第17章文書偽造の罪」に続く