~刑法を解説~15回目の本日は、第15章飲料水に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
飲料水に関する罪
第15章には飲料水に関する罪について規定されています。
規定されている内容は
第142条 浄水汚染罪
第143条 水道汚染罪
第144条 浄水毒物等混入罪
第145条 浄水汚染等致死傷罪
第146条 水道毒物等混入罪・水道毒物等混入致死罪
第147条 水道損壊罪・水道閉塞罪
この章では、人間が生きていくうえで欠かすことができない飲料水を保護するための法律が定められています。
この章で保護されている飲料水については、大きく「浄水」と「水道」に分かれています。
浄水とは、人が飲料水として飲むことが予想される水のことです。
人が飲料水として飲むので、ある程度の清潔さが求められますが、自然に湧出したものなのか、水路等によって人工的にひかれたものなのかは関係ありません。
そして水道とは、人間が人工的に飲み水として一定の地域場所にひいている飲料用の水を意味します。
それではまず第142条について解説します。
ここで規定されている浄水汚染罪は、人が飲み水として使用する浄水を汚染して、飲料水として使用できなくすることで成立する犯罪です。
ここでいう「汚染」とは浄水を不潔にする一切の行為を意味します。
水道が発展している現代ではあまり適用されることがない犯罪ですが、自然の湧水を飲料水として使用している地域であれば起こりうる犯罪ではあります。
これに対して、次条、第143条の水道汚染罪で対象とされているのは、水道水等ですので、現代では、水道汚染罪の方が起こる可能性が高いでしょう。
そして144条~146条では、浄水や水道水に毒物を混入したり、混入した飲料水を飲んだ人を死傷させる事が規制されています。
142条と143条が人の飲料水を保護しているのに対して、144条~146条では、飲料水を飲む人間の健康を保護している傾向が強く、重い結果が発生する可能性が高いために厳しい罰則が規定されています。
最後に147条に規定されている、水道損壊罪や水道閉塞罪は、現代社会において人間が生きていく上で必要不可欠とされる飲料水を保護している点では他の犯罪と同じですが、その方法が汚染や毒物混入ではなく、損壊や閉塞といった手段が選択された場合に適用されます。
飲料水に関する罪の罰則
①浄水汚染罪の法定刑は「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
②水道汚染罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
③浄水毒物等混入罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
④浄水汚染等致死傷罪の法定刑は、傷害の法定刑と比較して重い刑で処断されます。
⑤水道毒物等混入罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
⑥水道毒物等混入致死罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
⑦水道損壊罪・水道閉塞罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第16章通貨偽造の罪」に続く