3歳男児を置き去りにして外出したとして、吹田警察署が母親から事情聴取している事件を参考に、保護責任者遺棄罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
参考事件
吹田市の公営団地に住んでいるA子さんは、1年前に離婚し、現在は飲食店で働きながら3歳の一人息子と二人暮らしをしています。
そんなある日、A子さんは、女友達から飲みに行こうと誘われたので、まだ3歳の一人息子を自宅に残したまま飲みに出かけてしまったのです。
夜中になっても子どもの鳴き声がすることを不審に思った近所の住民が大阪府吹田警察署に通報して置き去りにされた息子は保護されましたが、その翌日からA子さんは警察署に呼び出されて取調べを受けています。
(フィクションです。)
保護責任者遺棄罪
刑法第218条に規定されている「保護責任者遺棄罪」は、老人、幼児、身体障害者、病人等を保護すべき責任のある者が、これを遺棄又はその生存に必要な保護を行わない場合に成立する犯罪です。
この法律は、保護すべき者しか主体になり得ないので、身分犯とされています。
また、この法律でいう「遺棄」とは、被遺棄者を危険な場所に移転させる移置のほか、被遺棄者を危険な場所に置いたまま立ち去る置き去り行為を含みます。
保護責任者遺棄罪の遺棄の要件としては、要保護者は、遺棄されたことによって、その生命・身体に危険が及ぶ状態に陥らなければならないとされているが、この危険は必ずしも具体的なものである必要はなく、抽象的な危険であれば足りるとさせています。
ですから今回の事件の場合だと、自宅に置き去りにされた子供は、警察に保護されたことによって危険を回避することができていますが、保護責任者遺棄罪の成立には何ら影響しないと考えられます。
逆に、要保護者の生命・身体に危険が認められない場合は、保護責任者遺棄罪は成立しません。
ちなみに保護責任者遺棄罪において保護責任者に必要とされる保護義務は、要保護者の生命・身体を危険にさらしてはならないという義務であって、民法上の扶養義務とは異なります。
例えば
・夫が、妻のもとに幼児を残して失踪する。
・幼児を養育院に託した両親が、養育料の支払いを怠る。
場合などは、保護者が扶養義務を怠る行為ではありますが、それによって要保護者の生命・身体が危険にさらされるわけではないので、保護責任者遺棄罪は成立しません。
保護責任者遺棄罪に強い弁護士
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