同僚と殴り合いの喧嘩をした場合、正当防衛が成立するのか、それとも相被疑傷害事件となるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
参考事件
大阪府貝塚市のビル解体現場で働いているAさんは、解体工事中の手順を巡って、同僚と口論になりました。
その際に同僚から胸倉を掴まれたことが発端で、お互いにつかみ合いになり、最終的にはお互いに殴り合う喧嘩に発展してし、二人とも顔面から出血する傷害を負ったのです。
Aさんは、相手が先に手を出したのだから、自分の行為は正当防衛だと思い込み、大阪府貝塚警察署に、喧嘩した同僚を傷害罪で訴えたのですが、その際に、警察官からは「相被疑傷害事件ですよ。あなたは被害者でもあり、加害者でもあります。」と言われました。
(フィクションです)
正当防衛
まず正当防衛について解説します。
正当防衛は、刑法第36条に規定されている法律で、急迫不正な侵害に対し、自己又は他人の権利を守るために、やむを得ず行った防衛行為が正当防衛です。
正当防衛でいう「脅迫不正の侵害」とは、法益の侵害が現に存在しているか、又は直前に迫っていることをいいます。
したがって、過去の侵害や、未来の侵害に対しての反撃行為は、正当防衛とはいえません。
ただし、威力のある防犯装置を設置する場合、同装置が、現に発生した不正な侵害に対して相当な効果を発揮するものであれば、未来の侵害に対して備えたものでも正当防衛が認められる場合があります。
次に、「不正」とは、違法であればよく、有責であることまで必要ありません。
したがって、刑事責任能力のない者による侵害行為に対しても、正当防衛が成立します。
また「侵害」とは、生命・身体に危険を生じさせる違法な行為を意味し、故意・過失や、作為・不作為を問いませんが、積極的な侵害行為でなければなりません。
続いて「やむを得ずにした行為」とは、急迫不正の侵害に対する防衛行為が、自己又は他人の権利を守るために必要最小限度でなければなりません。
ここでいう「必要最小限度」とは、防衛行為により生じた結果ではなく、その防衛行為が必要最小限度であることを意味するので、防衛行為によって相手が重傷を負った場合でも、その防衛行為が必要最小限度であると認められれば正当防衛が成立します。
相被疑傷害事件
今回のような殴り合いの喧嘩をしてお互いに傷害を負った場合は相被疑傷害事件となります。
Aさんのように相被疑の傷害事件に巻き込まれた場合、まず大切なのは、事件後速やかに、病院で診察を受け医師の診断書を得ることです。
よく相被疑の傷害事件に巻き込まれた方で、相手が被害届を出したら、こちらも被害届を出すという方がおられますが、その様な場合でも、診断書を得ないまでも、少なくとも医師の診察を受けておくことをお勧めします。
もし事件からしばらく経過して相手が警察に被害届を提出した場合、それから医師の診察を受けても、相手からの暴行で傷害を負ったかどうかの因果関係の立証が難しくなるばかりか、怪我が完治して診断書を得れない場合があるからです。
その場合、自身の行為は傷害罪の適用を受けますが、相手は、傷害罪よりも軽い暴行罪までしか適用されない可能性があり、その後の刑事罰に差異が生じてしまいます。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですが、相被疑の傷害事件ですと、怪我の程度にもよりますが、ほとんどの事件が、不起訴処分か、略式罰金刑となります。
暴力事件の弁護活動を得意とする弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部は、相被疑傷害事件などの暴力事件の弁護活動を得意とする法律事務所です。
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