自転車事故

具体例

ケース

大阪市北区在住のAさんは、自転車でコンビニに行く途中、前方から歩いてきたVさんと衝突しました。
しかし、Aさんは、Vさんを救護することなく逃走しました。
Vさんは、頭の骨を折るなどの重傷です。
後日、Aさんは、大阪府大淀警察署に任意出頭しました。
(フィクションです)

(問題となる条文)
【重過失傷害罪(刑法211条)】
「重大な過失によって人を死傷させた」場合、
「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」となります。

【救護義務違反(ひき逃げ)(道交法117条の5第1号)】
自転車で交通事故を起こした場合でも、相手に怪我がないかを確認し救護する義務が課せられています(道交法72条1項前段)。
もっとも、自動車の場合と違い、自転車で事故を起こして救護をしなかった場合には道交法117条2項ではなく同法117条の5第1号により規定されている罰則を受けることになります。
すなわち「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」となります。

(解説)
自転車が関わる事故は、毎年多数発生しています。
大阪交通白書によると、平成25年度には、大阪府内だけでも14571件の交通事故が発生しています。

そして、近年問題となっているのは自転車側が加害者となる重大事故です。
自転車側が加害者となる交通事故が発生した場合、民事上の責任として多額の賠償責任が生じることはもちろんですが、加害者の年齢によっては刑事責任も問題となります。

自転車事故が発生した場合、多くは刑法で規定される重過失致死傷罪で処罰されます。
また、自転車はいわゆる軽車両に当たりますから、道路交通法上の罰則も問題となります。
すなわち、自転車の飲酒運転(酒気帯び運転は除く)や自転車事故のひき逃げ・当て逃げも処罰の対象になるのです。

最近では、自転車事故に関する任意保険も増えてきました。
民事責任として損害賠償金を支払うという際に、非常に役に立ちます。

しかし、実際の利点はそれだけではありません。
被害者に対する被害弁償や早期の示談金の支払いは、刑事責任を回避・軽減することにつながります。
したがって、刑事責任が問題となる場面においても、任意保険に加入しているかそうでないかは、非常に重要なのです。

自転車事故における弁護活動

1 無実の主張

実際には自転車事故を起こしていないにもかかわらず、容疑をかけられ捜査されることもあります。
そのような場合は、弁護士を通じて真犯人の存在を示す証拠や事故を起こしていないアリバイを示す証拠を捜査機関や裁判所に提出して無実であることを強く主張します。

また、被疑者側に無実を証明する決定的な証拠がなくとも、捜査機関側に自転車事故を証明する決定的な証拠がないことを主張して無罪判決や嫌疑不十分による不起訴処分を勝ち取る方法もあります。

2 過失がないことの主張

重過失致死傷罪や過失致死傷罪などが問題となる場合、加害者に過失(結果発生を予見し、被害結果を発生させないようにするための注意を怠ること)があったかどうかが重要なポイントになります。
過失がない場合、犯罪は成立しません。

したがって、弁護士は、運転状況や被害者の行動・事故現場の状況などから加害者に過失や重過失がなかったと考えられる場合、客観的証拠に基づいてそのことを説得的に主張します。
こうした主張が認められると、不起訴処分や無罪判決の獲得につながります。

3 被害弁償や示談交渉

自転車事故を起こしてしまった場合、できるだけ早く被害者に対する被害弁償や示談交渉をすることが重要になります。
早期に被害弁償や示談成立に至った場合、不起訴処分や早期の釈放につながりやすくなります。

4 情状弁護

自転車事故を起こしてしまったこと、飲酒運転をしてしまったことなどにつき争いがない場合であっても、加害者に有利な事情を客観的な証拠に基づいて主張することによって、起訴猶予による不起訴処分、執行猶予付き判決や減刑を勝ち取ることができる可能性があります。

具体的には、被害者と示談が成立している・被害者に対して謝罪し、十分に反省している・2度と事故を繰り返さないように具体的な防止策や環境づくりに取り組んでいるなどといった事情を主張していきます。

5 早期の身体解放

自転車事故で逮捕・勾留されてしまった場合でも、証拠隠滅や逃亡を疑うに足りる相当な理由がないといったことなどを主張して早期の釈放・保釈の実現を目指します。
このとき加害者に養うべき家族がいるといった事情も早期釈放に有利な事情になります。

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