名誉毀損罪・侮辱罪

具体例

ケース

大阪府に住んでいる26歳・男です。
先日私は、知人の男性について、実際にはそのような事実はないのに、犯罪行為を行っているという内容の投稿をインターネットのサイトに投稿してしまいました。

こういう内容の投稿を行うことは、犯罪になりませんか?
(フィクションです)

(問題となる条文)
【名誉毀損罪(刑法230条)】
「公然と」「事実を適示し」「人の名誉を毀損した」場合、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」になります。

【侮辱罪(刑法231条)】
「公然と」「人を侮辱した」場合、「1年以下の懲役若しくは禁錮、30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」(令和4年7月7日改正法施行。それ以前は「拘留又は科料」)になります。

(解説)
まず名誉毀損罪・侮辱罪について簡単に説明すると、名誉毀損罪はある人の社会的評価(=名誉)を下げる具体的事実を公然と告知する行為により犯罪が成立する一方、侮辱罪はある人の社会的評価を下げるに至らなくてもある人を社会的に軽蔑する内容を公表する行為により成立します。

どちらも犯罪が成立するためには「公然と」行うことが必要です。

「公然と」とは、不特定の人又は多数の人に対して行うことを指しますので、名誉毀損罪や侮辱罪が成立するには、前述した行為を不特定又は多数の人に向けて行っていることが必要になります。

そして、両罪の成立を判断するにあたって最も重要なポイントとなるのは、「事実を適示し」ているかどうかという点です。
名誉毀損罪の場合は、社会的評価を害する具体的事実を適示していないと犯罪は成立しませんが、侮辱罪の場合、事実を適示していなくても犯罪が成立します。
したがって、両罪を区別するために具体的な事実の適示があったかどうかが重要になるのです。

今回のケースでは、ネットに掲載されている投稿の内容が詳しくわかりませんので断定はできませんが、ある人を犯罪者であると表現する行為は、人の社会的評価を下げるに足りるものであると言えるでしょう。

もっとも、名誉毀損罪が成立するか侮辱罪が成立するかは、前述したように具体的な事実の適示があるかないかという点に左右されます。
何らかの具体的事実を示して、知人が犯罪行為を行っているという内容を投稿しているのであれば、名誉毀損罪で告訴されることもありうるでしょう。

名誉毀損事件・侮辱事件における弁護活動

1 示談交渉

名誉毀損罪・侮辱罪の大きな特徴としては、親告罪であるということが挙げられます。

つまり、これらの罪は被害者の告訴がなければ、起訴することができないということです。
起訴できなければ刑事裁判が始まることもないため、前科は付きません。

したがって、弁護士は名誉毀損事件・侮辱事件の依頼を受けた場合、被害者の方が告訴しないように、あるいは告訴を取り下げてもらうように交渉します。

そして、被害者の方との間で示談が成立している、あるいは被害弁償も済んでいるという状態にできれば、その後の民事裁判(損害賠償請求訴訟など)も回避することができます。

2 名誉毀損罪・侮辱罪不成立の主張

名誉毀損行為・侮辱行為をしていないにもかかわらず、捜査機関に逮捕されたり取調べを受けたりしている場合、弁護士は捜査機関の見解が十分な事実や証拠に基づくものではないこと、あるいは客観的な証拠に基づいて名誉毀損罪・侮辱罪が成立しないことを主張し、不起訴処分・無罪判決を得られるように活動します。

3 被害者側の対応

名誉毀損罪・侮辱罪にあたる行為は、放置しておくとさらに状況を悪化させる場合があります。
ですから、名誉毀損事件・侮辱事件で被害を受けた方も積極的に弁護士を活用して、卑劣な名誉毀損表現や侮辱表現に対応することをおすすめします。

名誉毀損・侮辱に対する対処方法は、
①名誉毀損表現・侮辱表現を削除するよう管理会社や加害者本人に要請する、
②加害者本人に対して損害賠償請求する、
③刑事告訴、
の3つです。

特に注意が必要なのが③です。名誉毀損罪や侮辱罪は、前述のとおり親告罪なので起訴するのに被害者の告訴が必要になります。

しかし、実際に一般の方が警察に直接行って告訴したいと言っても取り合ってもらえない場合も数多くあります。
そういった場合にも、告訴に必要なものを収集し、弁護士が代わりに警察と交渉することが可能です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所-大阪支部では、豊富な知識・経験に基づいて法的なアドバイスをさせていただいております。

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